長年のファンである布施明のライブに夫婦で行った。
年末には喜寿を迎える彼がどんな歌声度聞かせてくれるのか、とても楽しみだった。
大ホールではないところでのライブは初めてで、距離の近いところで聴けるとあってワクワク感を抑えきれない思いで会場へ。
開場時間の少し前、入口のところには既に20m以上の行列が出来ていた。中高年、取り分けおばさま方が中心だった。話し声が漏れ聞こえてきて、どうやらこれから1stステージを見て、入れ替え後も引き続き2ndステージも見るようだった。雰囲気的にそんな人も少なからずいるようだった。
我々は予算的にも1stステージの1回切り。第一、2ndステージも見たら、帰りが相当遅くなるので到底無理。
開場時間になり、長蛇の列がもどかしいように少しずつ前に進んでいく。
中に入っても、受付まではそこそこ距離があった。クネクネと列を進んでいき、やっと受付が見えてきた。やっとたどり着いた窓口でスマホの画面を見せる。二人の席番号が表示されている。
いよいよ中へ。すぐにバーカウンターがあったが、そこを通り過ぎて、ステージ右サイドへと移動。アルファベットが付された番号だったり、番号だけだったり。我々の席は、同じ番号のAとB。ステージを上手から臨む3列あるうちの3列目。ラッキーなことに、イスがソファータイプで背中が壁。前2列は、一人がけのチェアタイプだった。
座ると正面やや右にステージという位置。ピアノ、ギター、ベースギター、ドラムスがセットされている。
入場開始から1時間弱、殆どの人が着席状態となった。一部、まだドリンクや食べ物の注文の真っ最中の人もいたが。
いよいよバンドメンバーがオンステージでスタンバイ。登場と共に常連とおぼしき人達から大きな拍手や声援が起こった。それで客席も一気に臨戦態勢?の雰囲気となった。ピアノは、布施さんと長年の音楽パートナーである井川雅幸さんだ。
さて、いよいよ布施明の登場となる。ステージ上手袖には、屈強そうな浅黒いガードマンも鋭い目を光らせている。我々のすぐ右下のドアからさっと現れステージ中央へ。盛大な拍手が起こる。彼は、中央を通り過ぎ、すぐ側の客席に向かって、「泣くなよ~!」(と聞こえた)と言ったかと思ったら、伴奏と共にいきなり歌い始めた。まさかのスタートだった。
まずは観客に向かっての挨拶とか、何らかの演奏が始まってから、おもむろに主役が登場して1曲目が始まる。そんな型どおりの予想は、木っ端微塵に粉砕された。いきなり、歌の世界に引き込まれ、もう何曲目かを聞いているかのような心持ちになってしまった。立て続けに何曲かのジャズナンバーを歌った。声の衰えは全く感じない。途中で挟むおしゃべりも昔から変わらず軽妙で、頻繁に笑いを誘っていた。
Something Jazzy というタイトルは、オリビアとの愛息が、父親の歌を聴いて言った感想の言葉だったという。「なんかジャズみたいなものって、酷い事言う」ととても嬉しそうにぼやく姿は微笑ましかった。
「今日は、日本語の歌は3曲だけ唄います」と言って、聴衆の心にも寄り添ってくれることを忘れない。その中にとても好きな曲が含まれていた。「ピエロ」作詞・作曲:布施明 編曲:井川雅幸(本人は、紹介の時、作詞は自分で、作曲は井川さんだと言っていたけど、実際はどうなんだろう?)悲しい片思いの男の歌。例によって、歌劇のようなスタイルで、心をその世界に連れて行ってくれた。ウルッときたことは言うまでもない。
ジャズナンバーもよく知っている曲があった。Somebody Loves Me「誰かが私を愛している」だ。独特のアレンジで、まるで違う曲のように聞こえたが、それも布施ワールド全開だった。
珠玉のひとときは、瞬く間に過ぎる。アンコールに応えてもう1曲。終わって、大きく男性の声で「アンコール!」と場内割れんばかりの拍手。ちなみにその男性は、意外に若い人らしく、布施さんのライブには常連でもあるらしいことを、ある布施さん追っかけのYouTuberさんが言っていた。「おじさんの声で言われてもなあ」みたいなことを言ってぼやいていたが、それも今から考えると、お約束みたいなものなのかもしれない。
「特別だよぉ!」の一言で始まった曲は「君は薔薇より美しい」!唄いながらアリーナをゆっくり握手攻めに遭いながら一周。場内は最高の盛り上がり!かなり遠くの位置に居た人も何人か握手を求めて殺到して、例のガードマンも必死で布施さんを守っていた。とはいえ、布施明ファンは概して行儀の良い人ばかり。混乱無くフィナーレを迎えた。しばらく鳴り止まない拍手!
久しぶりに味わう、非日常世界に浸ったひととき。余韻に浸りながら、会場を後にして、地下鉄の駅に向かい、帰途についた。
来年はデビュー60周年。更に円熟味を増した布施明にまだまだ期待の炎は燃え続ける。
